拾い者をした

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寒い…。   傘に当たる雨の音が俺の耳に聞こえる全ての音。 足音さえ消える大雨に舌打ちする。   ついてねぇ。   そう思っていると、横から何かが聞こえる。 水溜まりに何かが倒れるような音が……。 それに少し気になって、俺は倒れた何かを見下ろした。     寒い…。   肌に当たる雨が僕が感じる全ての感触。 素足でアスファルトの地面を歩く感覚すら無くしそうなぐらいに冷えた体温。   ついてないな……。   そうつぶやいた途端、地面に倒れ込んでしまった。 大きな水溜まりの上で倒れたせいか、派手に大きな水音がする。   でも誰も気付いてくれないだろうな…。   そう思っていると、かすんでいく視界の横に何かが見えた。何かと思う間もなく、一気に思考が落ちていく。     そいつは小僧だった。 まだ幼さの残る顔つきにくすんだ銀の短髪。 瞳も同色で、服はぼろ布のようなシャツとズボンのみだった。 「まぁ、俺には関係ないな…」 と、通り過ぎようとした時、俺の足が止まる。 小僧が俺の左足を掴んでいたからだ。 「放せよ」 言うものの、意識を失っているのか返事が無い。 「………」 少し考え、溜め息をついてから俺はその小僧を背負った。 雨をかなり吸ったのか、冷たくて重い。   「冷てぇな、畜生が…」     雨が、止んだ気がする。 薄れた思考で考え、僕はそのままゆっくりと気を失ってしまった。     4月の初旬。 こうして俺は、面倒な『拾い者』をした。
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