26人が本棚に入れています
本棚に追加
蛍は、メニューを取る時、俺にささやいた。「可愛いじゃない♪ あなたを追い掛けてくるなんて」
……すでに蛍は察しているようだ。
「凄い。カクテルって、こんなに種類があるんですね。」
「これは、ほんの一部よ」と言って、蛍が笑う。
「じゃあ、あの…カルーアミルクを下さい。 これなら知ってるから」と井上が注文した。
蛍は、笑顔で頷くと「ちょっと待ってね♪」と言った。
俺は、煙草に火を着け、ため息混じりに煙を吐き出した。
こんな時に限って、あの馬鹿は、まだ来ない。 どうするか……?
「お待たせ♪」と蛍が井上の前にグラスを置いた。
「美味しい! 居酒屋とかのと全然違う。 どうしてですか?」
「企業秘密♪」と蛍は笑った。
「ほた…いや…あの、すみません。同じ物を下さい」と情けない声で注文する。
蛍は、二杯目を俺に差し出し、またささやいた。「声掛けたら? 何かマズいの?」
「まあな……それより、あいつはまだか?」
「優君なら、残業とか言ってたような……」
「ホントか?」
「最近ちょっと忙しいって」
俺は立ち上がるとトイレに向かった。 ちらりと井上を見ると、また目が合った。………しかたない……。
「い、井上じゃないか……どうしたんだ?」我ながら大根だ……。
「悪いとは思ったんですけど……柴田さんを追い掛けて来たんです」と井上は、正直に言った。
「な…なんで?」
「柴田さんが普段どんな所で飲んでるか知りたくて。 こんな素敵なお店で飲んでるんですね♪」
「ま、まあな……」
「待ち合わせの人、来ませんね」
「ああ……」……井上は俺の嘘に気付いていて、言ってるんだろうか?
どっちにせよ……マズい状況だ……
俺は、そのままトイレに入ると携帯を開き、優作に電話した。
すると、すぐに繋がり嬉しそうな声が聞こえた。「珍しいじゃん、お前から電話くれるなんて♪」
「どうでもいいから早く【COLTLANE】に来てくれ」
「何かあったのか、恭介?」
「訳は後で話す。それから、俺とお前は待ち合わせしてる事にしてくれ」
「………わかった。これは貸しだからな、恭介♪」
「……しかたない、わかった……」
最初のコメントを投稿しよう!