色の無い雨

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 蛍は、メニューを取る時、俺にささやいた。「可愛いじゃない♪ あなたを追い掛けてくるなんて」 ……すでに蛍は察しているようだ。 「凄い。カクテルって、こんなに種類があるんですね。」 「これは、ほんの一部よ」と言って、蛍が笑う。 「じゃあ、あの…カルーアミルクを下さい。 これなら知ってるから」と井上が注文した。 蛍は、笑顔で頷くと「ちょっと待ってね♪」と言った。 俺は、煙草に火を着け、ため息混じりに煙を吐き出した。 こんな時に限って、あの馬鹿は、まだ来ない。  どうするか……? 「お待たせ♪」と蛍が井上の前にグラスを置いた。 「美味しい! 居酒屋とかのと全然違う。 どうしてですか?」 「企業秘密♪」と蛍は笑った。 「ほた…いや…あの、すみません。同じ物を下さい」と情けない声で注文する。 蛍は、二杯目を俺に差し出し、またささやいた。「声掛けたら? 何かマズいの?」 「まあな……それより、あいつはまだか?」 「優君なら、残業とか言ってたような……」 「ホントか?」 「最近ちょっと忙しいって」 俺は立ち上がるとトイレに向かった。 ちらりと井上を見ると、また目が合った。………しかたない……。 「い、井上じゃないか……どうしたんだ?」我ながら大根だ……。 「悪いとは思ったんですけど……柴田さんを追い掛けて来たんです」と井上は、正直に言った。 「な…なんで?」 「柴田さんが普段どんな所で飲んでるか知りたくて。 こんな素敵なお店で飲んでるんですね♪」 「ま、まあな……」 「待ち合わせの人、来ませんね」 「ああ……」……井上は俺の嘘に気付いていて、言ってるんだろうか? どっちにせよ……マズい状況だ…… 俺は、そのままトイレに入ると携帯を開き、優作に電話した。 すると、すぐに繋がり嬉しそうな声が聞こえた。「珍しいじゃん、お前から電話くれるなんて♪」 「どうでもいいから早く【COLTLANE】に来てくれ」 「何かあったのか、恭介?」 「訳は後で話す。それから、俺とお前は待ち合わせしてる事にしてくれ」 「………わかった。これは貸しだからな、恭介♪」 「……しかたない、わかった……」          
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