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「あらっ!静かな練習してんのね~!残念っ!」
体育館の入口から、甲高い声が聞こえた。
入口に目を向けると、そこには今まで見た事のないオバチャンとは言い難い女性が立っていた。
何だ?
コイツ…!
この時の甲高い声の持ち主がユウコ…そしてこれが、オレ達が初めて交わした会話だったんだ。
「リョータはどこよ~?キャプテンのリョータはどこ~?」
ユウコは肩まで伸びた髪をかきあげながら、キョロキョロと体育館を見渡しながらオレを探す。
「リョータっ!お前だろ!行けよ!」
タカシは小声でオレにそう言いながら、オレの背中を強く押した。
「オレです…キャプテンですが、何か…?」
ユウコはまだ4月で肌寒さが残るにも関わらず、白いTシャツにジーパン、左手にはゴッツイ時計をしていた。
誰の姉ちゃんだよ?
偉そうにっ…!
オレは心の中で、そう呟いていた。
「あ~君がリョータかぁ!」
ユウコはそう言ってオレに近付くと、オレの頭を優しく撫でた。
オレはユウコのそんな行動に自分が馬鹿にされているような気がして、無性に腹が立っていた。
そんな気持ちは、態度に表われる。
「…用事ですか?オレ…練習の途中で…」
少しムッとしたオレは半分適当な返事をユウコに返したが、ユウコは体育館の外に向かい口を開くと、その先に居る誰かを呼んでいた。
「ハル~ナッちゃん!こっちおいでっ!」
ユウコが手招きした先には小さな女の子が二人、恥ずかしそうにオレを見上げていた。
「リョータ!この子達、私の娘よ!今日からお世話になるからね、よろしくねっ!」
と、ユウコは自分の娘を笑顔でオレに紹介してくれた。
オレはと言うと、ユウコがオレに向けた笑顔に戸惑っていた。
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