秋:心優しい女のぶる~す

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『悲しかったもの。あの子は何も悪くないのに…。』 『そうだね…。きっと俺達二人、これからの長い道、罪を背負って歩き続けるだろう。犯してしまった罪は癒される訳など無いのだし、益して宗教なんかで魂が救われる訳無いんだ!幾ら愛しても、愛されてもその罪の重さにいたたまれなくなる夜が来る。その時に…。』 俺は言おうとして何か別の力に言葉を遮られた。 『なぁ、諸行無常と言う言葉がある。全ての行いは何時の日にか崩れ行く。二人愛し合った事も、二人暮らした日々も、二人の祈りも約束も決して間違ってはいない。間違ってなんかないんだ!二人離れて行くのは自然の摂理。大いなる意志だ。だからこれでいいんだ。あるがままに生きて行くんだよ。お前のあるがままに…。』 代わりに口を付いて出た言葉を、俺は自分に言い聞かせる様に言い、セブンスターに火を点けた。 『そう…。そうね。二人出会った事は間違って無かった。そして二人が別れてしまった事も。』 『…そうだよ。』 『でも最後に背を向けたのは貴方だったわ。』 彼女は少し意地悪っぽく言った。 その後、俺が泣きながら歩いていた事をお前が知る事は決して無いんだろうな…。 『あぁ、お前だけ背を向けて去って行くなんて不公平だろ?』 「そうね…そうかもね。」 …二人の間に沈黙が広がる。 二人違う道を歩き出してから流れた時の多さに、少し寂しさを感じた。 『あ!もう私、行かなくちゃ。』 『そうか…元気でな。』 『うん、ねぇ私達ハッピーエンドでしょ?』 『そうだな。ハッピーエンドだ。』 『良かった。』 彼女は煙の向こうに虚ろい消えて行った。 ハッピーエンド。新しい始まりに心ときめかせてお前の勇気に口付けてやろう。 二人の祈りも約束も全て反故にして…。 だけど何故だろう?景色がぼやけて頬を熱いモノが伝う。 『おかしいなぁ…アレッ?おかしいな…?』 後ろからはロバート・ジョンソンの悲しい叫びが聞こえて来る。 『何時の日か、何時の日か、お前とさよならするさ。何時の日か、何時の日にかお前にさよならを言うのさ。もうこれ以上、耐えられないよ。喜びを見い出せないから…。』 心優しい女のブルース。ギターはスライドして消えて行った…。
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