夏:七月七日の出来事

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『昔ぃ!?なんてこった!!今はやらないの?なんで?なんで?星に願いをかけて心から祈り続ければその願いが叶うなんてそんな素敵な事は無いのに!!』 何時からだろう?人は星に願いをかけてきた。 今も昔も、西も東も。 自分ではどうもならない事。それでも夢見ずにはいられない事。 そんな想いを空の星に…。 素敵だね。ロマンチックだね。そして…それと同じ位哀しいね。 『哀しくなんかないや!!』 紫の煙は叫んだ。 『だけどどうにも成らない事を祈るのが空の星だけなんて哀しすぎるじゃないか。何時も何時も心から想い求め欲しているのに、叶わぬ願いは一体どうすれば良いんだい?』 『それは…』 紫の煙は戸惑い,しょげながら言った。 『それはオイラには解らない。ただそれでも今日が皆にとって大切な日だと言う事は知ってるんだ。そして祈り続ければきっと叶うと言う事も。あぁオイラにも手があって字が書ければなぁ願い事を短冊に書いて飾るのに…。』 一体こいつは何に成りたいのだろう?一体俺は何に成りたいのだろう? 俺は少し緊張気味に尋ねてみた。 人の夢を聞くと云うのは厳粛な事だ。その人の一番気高い部分に触れるのだから。 『一体…何に成りたいんだい?』 出来るだけ厳かな口調で聞く…。 『オイラは…』 紫の煙は少しためらいながら、それでも最後には胸を張ってこう答えた。 『オイラ、雲に成りたいんだ。オイラ都会の何処にでも在りそうなファーストフードの二階の窓際で小説家に成りたがってる貧乏で孤独なフリーターの吸ってるセブンスターの先から出てる紫の煙だ。そういう意識なんだ。全てのモノは意識があるから存在する。 《我想う故に我あり》だね。まぁそんな事どうでもいいか。大切なのはそうじゃなくなって雲に成ってずっとずっと空の上、ぷかぷか浮いていたいと言う事だよ。』 『ふーん、”都会の何処にでもありそうなファーストフードの窓際でセブンスター吸ってる貧乏で孤独なフリーターの煙草の煙で無く雲に成る事”ね…。』 俺は自分の言われ様に頭にきて、嫌味たらしく繰り返してやった。
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