呂布の天命

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『…どうして、俺は負けたのだ…』 両手を後ろに縛られ、今まさに処刑されそうな一人の男が納得出来ない様子で呟いていた。 体中ずぶ濡れで髪も乱れてはいたが、かなりの長身と筋骨隆々たる体躯は一見してもかなりの武将だと見てとれる。 この男は名を呂布奉先と言い、数多の豪傑達と戦って一度も負けず、そのあまりの強さから漢の名将李広になぞらえて『飛将』とまで言われ天下に知られた猛将であった。 しかし、同時に人を裏切る事でも有名で丁原、董卓と養父を次々と殺害し、果ては劉備と言う男が好意で招き入れた徐州を奪い取って己の居城とするなど平然とやってのける悪名高き男でもあった―‐‐。 「俺の武に勝てる者などこの世にはおらぬ。 例え神が相手でも俺は負けぬぞ」 徐州を手に入れた頃の呂布は、己の武力への慢心から家臣達の諫言も聞かなくなり自分の意にそぐわない者は、例えどのような者でも容赦無く罰していった。
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