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午後五時半を回った頃、少し雲が掛かってきた。
だが、雨も降りそうになく、祭りには何の支障もない天気だ。
夕焼けによって、雲が茜色に染まっていて、桜との相性は抜群だ。
綺麗な景色を見ながら、清二は何故か不安な気分になっていた。
(なんだろう・・・この変な感覚は)
まるで、自分だけ違う世界に取り残されたかのような、孤独感を感じていた。
気が付くと、清二は但一人暗闇の中を歩いていた。
建物もない
人も居ない
何もない空間
ただ闇が広がっていた。
「ここ・・・何処なんだろ?」
不安は恐怖に変わり、清二は何かから逃げるように走っていた。
どれだけ走ったのか、清二自身にもわからない。
次第に、光が見え始め光が清二へと近づいてくる。
次の瞬間、目の前が光に包まれ、清二は目を瞑った。目を開けると、そこにはいつも街の風景があった。
「何だ、今までのは夢か」
この時の清二は安心した事だろう。
目の前の風景は間違いなく見慣れた景色であり、あの虚無の空間は但の幻だと。
そう思っていた時
「グォォォォォォォォ!!」
何処からともなく、獣のような雄叫びが響いてくる。
「な、何だ?今の」
清二は再び不安になる。
何なの分からないが、雄叫びのする方向に向かう。
「グォォォォォォォォ!!」
雄叫びのする場所に着いてみると、そこは・・・祭りが行われる公園だった。
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