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―ザー ザー
今日は一日晴れの予報だったのに、急に天気が崩れ雨が降り出した。少し雨宿りしていたが、一向にやみそうになかったので走って帰る事にした。
その帰り道、星斗は何かを感じていつもとは違う角を曲がった。
「星斗、何だ?」
月斗の声を無視し、星斗はそのまま進む。
「ちっ」
舌打ちしながらも月斗はその後を追った。
少し行った所で星斗が立ち止まった。追い付いた月斗も星斗の暴走理由がわかった。
少年が倒れていた。雨に濡れているのに、ボロを着ているのにその少年は汚くなかった。逆に目が引き付けられて離せなかった。
「星斗感じたのか?」
月斗の質問に星斗は首を縦に振る。
「なら生きてるな。だがこの距離で…」
星斗は人の強い感情を感知してしまう事があった。しかし、今までは目の前の人物限定だったので、離れたこの子の感情だとわかり2人とも驚いていた。
「寂しいんだな…」
受け取った感情を吐き出す様に、星斗が寂しそうに呟く。
「おい。お前」
呼び掛けてもその子はピクリともしない。星斗が感じたのだからまだ生きてるはずだか心配になる。パッと見外傷は見当たらなかったので安心していたのだ。
「おい生きてるか?」
数回呼び掛けるとやっと目が開いた。
その目を見て月斗も星斗が言った『寂しい』が少し解った。
助けを求める意思も、倒れている辛さも、その目には浮かんでなかった。自分の内が空っぽの様な虚な瞳だった。
「もう大丈夫だからな」
「すぐ病院連れてってやるからな」
上着を脱いで掛けてやりながら言うとその子はまた目を閉じた。今度は眠っただけだと解った。
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