‐時の歪みと消える男‐

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借りた部屋に入り、 椅子に腰かけるユウキ。 そんなに大きくもないベッドには、 たった一つだけの荷物であるカバンが、 ポツリと置かれている。 ユウキ「そういえば、 おっさんの手紙…まだ途中だったよな。」 手紙を取り出して読み直し始めた…。 『―――…それと、 伝えて置くべき事がある。 新薬の増強剤だが、 君は決して飲んではいけない。 前回の効力を上回る程度は望めるが、 危険性も極める。 並大抵の者が飲めば、 体が耐えきれなくなるだろう。 君の場合では特にだ。 1度服用した今の体では、 すでに限界である事は君もよく熟知していることだと思う。 本当の最終手段と考えてくれ――』 ユウキ「耐えきれなくても、 魔王ともしもの対立時には飲むしかないかもな…。」 そう呟いて、 文面の続きにまた目を通す。 『ユウキ君、 これが最後に言っておく事だ。 過去が少しでも変われば未来は大きく変わる恐れがある。 場合によれば時の歪みが生じ、 自分自身の存在を消す事になる結果を招かねん…。 気をつけてくれ。 そして…必ず帰ってきておくれ。 全てが終わったのち、 ゆっくり話がしたいんだ。 “君の事”、 詳しく聞かせておくれ。  ―ジン― 』 手紙を畳み、 じっと沈黙する。 ユウキの顔が優しく変わる。 ユウキ「おっさん…。 未来を変えるとしても、 アンタの最愛の息子、 シュンスケ君を絶対殺させないッ…。 きっと救ってみせる。」 シュンスケが襲われる前に、 レグナの覚醒を阻止する事で全てが解決する。 そう信じて今は前に進むしかない。 何が起きて、自分を滅ぼすかもわからない…。 時を歪ませず行動するには、どうすればいいか。 もし無事に全てが解決しても、未来が変わるならきっと自分自身も…。 ――やるべき事は レグナを見つけ出してシュンスケを守り、 これから現れる怪物を始末していく事。 今は、それだけを考えよう。      
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