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「父さん行っちゃダメだ!」
その日、父は飛行機に乗って海外へ行く予定だった。
「大丈夫ちゃんと帰ってくるさ」
父は大岳の頭をなでてそう言った。
「違うんだ。糸が出ているんだ」
大岳は悪いことが起こると感じていた。
「糸? そんなものどこにも無いぞ」
その糸は大岳にしか見えていないようだった。
「ここにちゃんと……」
大岳が糸をつかんだその瞬間。
空が見えた。山と空。どこか分からないがはっきりとその景色が見える。流れ込んでくるそのイメージ。
「この子ったらあなたにいて欲しいからって嘘をついて」
母は言った。
嘘じゃないそう言っても信じてくれないと大岳は分かっていた。自分がおかしいんだと。
ふと黒い糸が見えた。ふわふわとどこに伸びているのか分からない糸。
大岳が止められるわけも無く父は旅立った。
次の日のニュースは飛行機墜落のことばかりだった。
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