私と母

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あのね。 お母さんね、今日病院の先生に言われたの。 お母さん、白血病って言う、血液の癌なんだって。 もぉ、永く生きられないんだって。 未だ中学生のあなたと、未だ小さな妹を遺して、もぉ行かなきゃいけないんだって。 ちょっと道を外れてしまったあなたが、ちゃんと生きれるのか、ちょっと心配。 でも、あなたが本当は、凄く優しい子だって知ってるよ。 きっと幸せに生きていけるって信じてる。 あなたには沢山苦労させて御免ね? 折角一緒に暮らせるようになったのに、もぉ行かなきゃいけなくて御免ね? これからも苦労させちゃうけど、御免ね? あなたが未だ三年生の時、お父さんとお母さんが、妹を連れて死に場所を探した時。 不思議だけど、あなたの声が聞こえたの。 「ただいま」って、声が聞こえたの。 だからお母さんはお父さんに、あなたが待ってるから、家に帰りたいって言ったの。 帰った家に、あなたの姿はなかったけど…。 お母さん達を助けてくれてありがとう。 産まれてくれてありがとう。 沢山の御免ねとありがとうは尽きないけど。 お医者さんは駄目だって言ったけど、お母さん頑張るよ。 必ず此処に帰ってくるからね。 これは、私が中学一年生だった時の母からの手紙。 病に侵された母がくれた、最後の手紙。 母と私を語るのに、お話は私の小さな頃から始まります。 ・
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