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そんな私の元に母からの電話が来たのは、その日の夜だった。
皮肉な物で、母が帰って来たのは、私が父の元に帰ったその日だった。
私は母が家に帰った事は聞かされたが、家に戻る事はなかった。
後に聞かされた話、母は私を迎えに行くと言ったらしいが、父はそれを拒んだ様だ。
何故あの時、父と母は死ぬ事を選んだのか。
正確には、あの出来事がそぉ云う事だったと知ったのは、もっと後に母が話してくれた時だったが。
今の父が母と一緒になるため、家やお金、仕事で築いた地位も捨て、一枚のスーツだけを持って離婚した事を聞いた。
今思えば、家は極端に貧乏だったのだ。
家は平屋で古く、水洗じゃないトイレだった。
小麦粉をこねて作った具が、唯一の食事だった日も幾度とあった。
しかし私が貧乏な事に気付かなかったのは、母が私に、ひもじい思いをさせなかったからだろう。
就職先の決まらない父の代わりに、スーパーの中にある小さな食事所で働いていた母。
小さな妹をおぶって、私はよく母の元へ行った。
お昼過ぎにおいでと言われていたので、私はいつも決まった時間に行った。
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