プロローグ

2/2
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
涙が止まらなかった。 俺は男なのに 止めることができなかった。 「ごめんね…」 謝って欲しくなんてなかった。 それなのに 「ごめんね…」 妹はただ謝っていた。 「柳雅…」 父親がそっと肩に手を乗せた。 その手は暖かくて とても大きくて そして憎かった。 妹が居なくなってしまう。いままでずっと一緒に住んでいたのに。 ずっと仲良しだったのに…それが終わってしまう。 駅のホームに僕らはいた。もう数分で電車が来て、妹を奪っていってしまう。 妹の身体と同じぐらい大きなトランク。それに僕がプレゼントした小さなキーホルダーが付けられていた。 だけど涙で視界が滲んで、キーホルダーはおろか大切な妹の姿でさえ見ることができなかった。 「ち…はや…」 何か言いたかった。言わなくちゃいけなかったのに 僕はただ妹の名前しか出てこなかった。 「お兄ちゃん。」 妹も泣いていた。姿なんて見えなくてもわかる。声が震えていたから。 「…さよなら…」 バイバイ、でも またね、でもない 別れの言葉。 ホームにアナウンスが流れる。遅れて電車が入ってきた。 妹が… 電車に乗って 僕の前から いなくなった。     …さよなら…
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!