それはある日突然に…

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春一番が吹き荒れた三月の宵の口…。 今日は雲一つない満月ということもあり、立花凜はフラッとマンションから近くのコンビニまでの道のりを歩いていた。行き慣れたいつもの道。見上げれば空には雲一つなくぽっかり月が浮かんでいる。凜が歩くたびに揺れ動きのびる影。周りには凜意外は誰もいない。ふと子どもの頃を思い出し影にむかって様々な動きをしてみる。中肉中背の体。月の光を浴び鳶色に揺れる髪。髪の合間から意志の強そうな瞳が覗く。 …とポケットをまさぐれば小銭が少し…。 (暇だね…しかし。金もないし…やっぱバイトでもしようかな~せっかく高校にも入ったことだし…。そだ奨学金の書類市役所にだして…あぁ~!明日木曜日だ~やっべ特売日じゃん。よし放課後はそれで決まりっと…!!) 少しずつ思考が家庭じみてきていることに凜は気付いていない。 凜が幼い頃に両親は相次いで亡くなっていた。凜が小学六年生の時である。 その後、父方の祖父と暮らしめたものの利き手が病気で不自由していたため、家事一般は凜の分担となった。祖父は少し変わった人で凜にいろんなことを教えてくれた。何でも昔は陸軍に入隊していたらしく、昔とった何とやらで絶対に解けない紐の結び方やサバイバル全般をこれでもかと教えてくれた。あげくのはてには実際に山の中に連れて行かれ、そこから放置…。結局○一昼夜かけて山から降りた。 (あの時はさすがにじいちゃん、俺のこと嫌いなのかとすっげ~凹んだんだよな~) けれど、普段はとても凜によくしてくれた。凜はそんな祖父が大好きだった。そんな祖父も凜が中学三年の秋に天国にいってしまった。それから凜は祖父に鍛えて貰ったノウハウを使いながら一人暮らしを始めた。なんとか高校も合格し、春から高校一年生となる。住む場所もなんとかきまり生活のめどもたちつつある。 (じいちゃんも言ってたもんな…『今ある先に光はある』って…。) 重い病状の中でも常に前向きに病魔と闘っていたじいちゃん。 凜はそんなじいちゃんが好きだった。 「…はぁ~。やめやめ‼何弱気になってんだか…。」 凜は思い出を振り切るように道路の角を曲がる。 と、凜の視界が真っ白に染まる。 キキキィッーーー!! そして間近に聴こえるゴムの軋む音と ガンンンッ!!!ドサッ… 嫌に内側から聴こえる鈍い音と何かが叩きつけられたくぐもった音と衝撃が凜を襲った。
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