【序章】

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 その知識がない頃のボルドでは―― 『人間以外の知的生命体はみんなバケモノ』  ――でしかなく、それらの多くは空想によって誇張された被害妄想のかたまりでもある。  不安は無知から来る物だ。  蓋を開ければ怖くもなんともない物でも、正体が不明なら、それだけで恐怖の素因になる。  人畜無害な狼男がいる事実さえ知れば、無駄におののく事はない。  ツノが生えた大男だって、その外見から凶悪な風貌に見えるからこそ『怖い』と言うだけであって、その人物が持つ本質的な物ではない。  簡素に言うのなら―― 『心優しい鬼だっている』  ――訳だ。  見た目と外見だけで全てが判断出来るのなら、世の中に詐欺師などいないのである。
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