第三章

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敬礼をしてスクリーンから消えると、ザールは作戦内容の確認と艦隊の出撃準備に掛かった。 それよりも先に機動部隊がまず、手始めとして木星へ進撃を開始する。 ディンギル前衛機動部隊― 旗艦『ギルガンド』艦橋― ゼール「全艦、土星へ向けて発進!」 一斉にエンジンが唸りを上げると、土星の衛星圏内へと足を進めて行く。 それから遅れて15分後、ルガール・ド・ザールの本隊も後を追うようにして行動を開始した。 本隊が向かう先は、火星と地球である。 ディンギル本隊― 旗艦『ガルンボルスト』艦橋― ザール「要塞はこの宙域で待機。」 後方での支援任務を主とする要塞空母に、待機命令を出す彼の若々しい声を響かせる。 そして、本目標の指示を全艦に向けて言い放つ。 ザール「全艦、出撃! 地球人共を一人たりとも逃がすな、撃滅せよ!!」 土星衛星『フェーペ』― コロニー『ハナニラ』司令部― ディンギル艦隊の接近など知らない、コロニーの駐在軍は相変わらずの平凡ぶりだった。 オペレーターA「はあぁぁ~。」 緊張の欠けらも無い欠伸が、指令室内部に力なく響いている。 それを見た同僚達も、あまりにも緊張感の無さに対して呆れた様子で見ていた。オペレーターB「お前、暇なんだな。」 オペレーターA「仕方ないじゃんか、敵が来なきゃ暇になるだけだ。」 オペレーターB「まあ、そうかもしれんが……そういや、火星の噂を聴いたか?」 オペレーターC「俺知ってるぜ。国籍不明の幽霊戦艦だろ?」 オペレーターB「幽霊じゃねえよ。だが、どうやら宇宙軍の奴らが鹵獲しやがったらしい。」 オペレーターC「噂じゃ、俺たち統合軍や宇宙軍を凌駕するらしいぜ。」 オペレーターA「チッ、宇宙軍が……。」 宇宙軍に対して悪態を突くなど、呑気な会話の最中にレーダーが異変を捉えた。 赤く表示された未確認の光点に気づいたレーダー手が確認を取る。 レーダー手「ん? これは……!?」 一瞬にして、レーダー手の顔色が真っ青になっていった。 ただ事ではない彼の様子に、コロニー司令官は不思議がって聞いてみる。 司令官『片山 雄二』少将― 片山「なんだ、どうした?」 レーダー手「レ、レーダーに多数の空間歪曲反応を確認! 数、なっ……75!!」 片山「何だと!?」 思わず片山は席から立ち上がって声を上げてしまったが、それを気にしている余裕は無い。
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