第十一章

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業火に包まれるウルクを後にして、古代はコモタイガー隊に帰還命令を出し、無事に離脱したヤマトへ戻って行った。 戦艦『ヤマト』格納庫― 古代「おい、救急班! こっちだ!」 医務員「了解! 担架を急げ!」 コスモ零を降りた古代の腕の中に、あの少年が抱き抱えられていた。 僅かな可能性に賭け、古代は医務班を要請したのだ。 少年が撃たれて約10分。 大人であれば、まだ持ち堪えられるかもしれない。 だが、幼い少年の場合では生きる確立は低くなる。 古代は少年を医務班に任せ、艦橋へ上がったが、ここでも古代は凶報を耳にする事となる。 同、艦橋― エレベーターから出て来た古代は、艦橋内部である違和感を感じた。 いるべき筈の航海長席と、レーダー席に島と森の姿が無かったのだ。 古代「ん……雪と島は?」 艦長の問いに、気まずそうな表情を作るクルー達の中で、南部が答えた。 南部「艦長、実は島副長が負傷されて、現在は手術室の方で……。」 だが最後まで聴く前に、古代は手術室へと一直線に向かった。 宇宙戦士訓練学校からの同期なのだ。 心配せずにはいられないのも、沖田のみならず皆が頷ける事であった。 同、手術室― 古代「島ァ!」 一刻も早く、島の安否を確認したい一心の古代は、丁度手術の終わった頃に駆け込んで来た。 佐渡「おぅ、古代か?」 森「古代君!?」 突然に駆け込んで来た古代に驚く森と、対して驚かず逆に五月蝿いと言わんばかりの佐渡。 そんな事に構わず、古代は佐渡に緊迫した表情で迫り島の様態を聞き出そうとした。 古代「先生、島は!」 佐渡「安心せい、島は無事じゃ。ただ、しばらくは安静じゃな。」 古代「そう……ですか。よかった……。」 藪医者としてかつては言われていた佐渡でも、手術の腕は一流の医者であるのだ。 彼が言うのなら、と興奮していた古代が安心して肩を落とす中、佐渡の表情が一変し険しい顔をしている。 それに合わせて、傍にいた森の表情も暗くなってしまい、これは一体何事なのかと思った時だ。 佐渡が重そうに口を開いて、悲しい事実を古代に伝え始めたのである。 佐渡「古代……。」 古代「何です?」 佐渡「実はな……あの子供の事なんじゃが……。」 父に撃たれて倒れた少年の事を言われて、古代は自分の胸がズキンと痛むのを感じた。

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