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トクン、トクン
静寂に支配されたこの空間でやけに大きく聞こえる鼓動。
その音で敵に、ここにいることがバレてしまいそうで、気が気でない。
壁際の淵で、黒威流雨(こくいるう)はその半分の視界で辺りを見通す。
サブマシンガン等を装備した警備兵が2人、巡回をしている。
ハンドガンの残りはあと一発。
「ひとり残るか‥‥いや」
警備兵は背を向けているが一人残ると増援を送られる可能性がある。
(まったく、厄介だ)
流雨は部屋から飛び出すと、途端引き金を引く。
ズンと鈍い衝撃が腕を襲うが、それでうろたえる流雨ではない。
瞬間的に兵士の足元から煙が吹き出す。
おかげで辺り一面曇り空だ。
「な、なんだ!」
「あわてんな。消火器だよ。バーカ」
いつの間にか敵に接近していた流雨は宙を舞、華麗なさばきをみせた。
「‥‥っ」
ドス、ドスと2度の音の後。バサ、と一つにまとまった。
倒れた兵士の頬に真っ赤なマーカーペンで、×マークを加える。
「終わったか‥‥」
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