蝶々の効果

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「私がさ、お風呂からあがって体を拭いてる時にジェロの海雪が聞こえてきたの‥でさ、私が脱衣場から出て来た瞬間、間違えなくカズ君慌てて携帯閉じたよね?‥‥相手、誰なの?」  そうきたか、そうきましたか優子ちゃん。返答に対し下手に時間を開けちゃ駄目だ。長くてもニ秒以内、それまでに納得する答えを出さなくては不自然だ、と思ったらもう時間。 「あぁ、歌ってたね海雪。やっぱジェロってカッコイィよね、なんといっても間奏に繰り出されるあの」 「はぐらかさないで‥真面目に…答えて‥」  痛い程の強い声の後の、消えて無くなりそうな悲しい声、優子は感情的になり今にも泣きだしそうな自分がいるのに気が付いた。 「そんな風にさ、話をはぐらかされたら、誰だって疑っちゃうよ。」  瞳に涙を纏った優子は綺麗で、まるで異世界から来た妖精かの様に見えた。  しょうがない、無料着うたを取るために登録したサイトからの迷惑メールって事にして、メールの受信時間と最初だけ見せたら大丈夫だろう、幸いサイト名はサンデーサンデーと、変な名前ではあるが十八禁を連想させる感じではないし、メールの上の方は宣伝ばかりだったはずだ。 いいぞ、俺。ナイスだ和哉。 「ああ‥メールね、あれは」 と、口にした瞬間脳裏を過る不安がいた。  そうだよ、俺はかなり慌てて携帯を閉じたぞ。反射的に携帯を閉じた。電源ボタンをちゃんと二回押したか?いや、押してはいないはずだ。どうする、携帯を開けたらおばちゃんいるぞ。若い子でも問題なのにおばちゃんだぞ? 「なんで黙るの?言えない事があるんでしょ?浮気してるんでしょ?」 「違うっ!優子、俺を信じてくれ。」  大丈夫だ、きっといける。画面を開くと同時に電源を二回連打。一秒以内のタイムラグの後、いつもの優子と俺が映ってるプリクラの待ち受け画面になるはずだ。留意すべきは携帯を開く速さ。親指が入る程度の隙間を作り、ボタンを押す。それからゆっくりと開けばいい。難しい事ではないはずだ。プッシュ音も出ない設定にしてある。いける。何も問題はない。
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