蝶々の効果

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 よし、そうと決まれば早く携帯を見せて安心してもらおう。そして早く卒業式を行おうではないか。  俺は携帯を取り説明をしようと手を伸ばした瞬間。 「動かないで!携帯に触らないで。」 少し、ビクッと驚き俺は手を伸ばしたまま止まる。 「私のお母さんね、私がまだ三歳の時、父の浮気のせいで離婚して、その後必死になって私を育ててくれてるの。新しい人も探さずに、ずっと独り身で頑張ってるの。だから私も男の人を信じるのが怖いのよ。」  今まで全然知らなかった優子の一面を知った。 「たぶんカズ君は今から携帯を私に見せて納得させるつもりでしょ?さっきまであんなにテンパってたのに携帯を見せるという結果に至る為には、状況が変わったと考えるのが普通と思うの」  何がどう普通なのかよく解らなかったが、優子は続けた。 「例えば今、浮気相手のメールを開いているとするでしょ?その場合、カズ君の携帯ではメニュー・消去・はいを選択すれば証拠隠滅出来るよね?返信メール制作途中でも、電源二回押したら浮気相手からの受信メールに戻りその後さっきと同じ手筈で消去できるわ。もし返信メールも送ってしまった後なら、流石に消去出来ないでしょうけどカズ君は私に携帯を見せようとしたって事は、今から証拠を隠滅出来る状態である可能性が高いってことになるわ。携帯を開く瞬間に出来ることって、人間にはこれくらいまでが限界だもんね。」  俺は電源ボタン二回あたりが限界だと思っていたが、彼女は常に俺の一歩先を行く。 「私がここまで言ったんだから、もう理解出来てるわよね?その携帯は今から私が、この手で開きます。それまでにもし携帯に触れたならば浮気を認めるって事になるんだからね。」  俺は瞬間理解が出来なくなっていた。たぶん、いや間違えなく今携帯を開いたらおばちゃんが映っている。なんて言えばいいんだ?言い訳できるのか?合理的で、納得の行くセリフを言える訳がない。  駄目だ、思考が止まる。  助けて下さい  誰か、助けて下さい
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