初恋

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恋とは、人を大胆にさせるものでございます。 これはまだ私が、うら若き、夢見る幼女の頃のおはなしです。 同じ【あやめ組】の男の子でした。 名前は確か「あつし君」だったと認識しておりますが、なにぶん太陽系からはみ出るほどに遠い記憶のため、正確な名前は覚えておりません。 唯一確実な記憶は、当時から私は露出嗜好があった…ということのみでございます。 さて、件の「あつし君」ですが、所謂イケメンではなかったように思い出されます。 いつもヒーローに成りきり、走り回っているような子です。 未だに何故彼に恋心を抱いたのか、全く持って理解できません。 けれどもそれが初恋なのでしょう。 私は臆面もなく、日々の誘惑に勤しんでおりました。 具体的にとった行動は、それはそれは幼児にあるまじき破廉恥極まるものでした。 彼の前に立ちはだかり、突如スカートをめくる。 または、めくっていいよと申し出る。 パンツの見えそうなミニスカートを履いていく。 ある時は、トイレまで連れて行き、排尿している姿を見せる。 これは流石に彼も不潔と思ったようでして、先生に注意をされたと、実母が言っておりました。 そんな淡い初恋ですが、当然のごとく成就は致しませんでした。 私本人は、かなり悩殺できていたと自負しております。 恐らく成就しなかった理由は、卒園式で彼のズボンを脱がせ、公衆露出をさせてしまったせいかと思われます。 あの日の彼の泣き顔と、慌てふためき青ざめている実母の顔が、記憶の片隅にあるような気がしないでもありません。 初恋は実らないもの。 その言葉を知ったのは、少女になってからのことでございます。
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