一通の密告

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後藤象二郎。この人物もうさんくさい。もともとは土佐藩のエリートの家系の出で、竜馬とは身分のひらきもあり、何回も双方ともトラブルになっている経歴もあり、竜馬の友人である武市半平太、岡田以蔵などを権力で殺したのも後藤である。その後藤が薩長に乗り遅れてはならないと竜馬の力をかり作り上げたのが船中八策で、のちの大政奉還につながる。土佐藩としても、後藤としても、この発案が竜馬であったら困るし、竜馬であったらならないのである。なぜなら、いち高官と浪人の身分差であり、脱藩者をヒーローにはできないのである。また、どんなに仲が良いふりをしても、後藤には吉田東洋を殺された怨みもある。すべてたてまえの友人であるが、全部が利害関係で結ばれているのである。この後藤が土佐藩の力を全部出し切って竜馬を守ったとしたら、絶対に竜馬は死んではいないはずだ。暗殺された場所の近江屋は土佐藩邸の目と鼻の先で、誰一人として竜馬の警護についた記録はない。土佐藩にとっても、後藤にとっても竜馬は大事な人材ではなかったと考えられる。竜馬の葬式すら土佐藩はタッチしていない。
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