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男には戦争の敵国生まれの恋人がいた。彼らがが恋仲だと知れると弾圧され、非国民と罵られ、ついに今日、男の国の戦艦に強制連行された。重りをつけられて海に放り込まれるのだ。
戦艦に乗せられる前、最期警告がされた。軍人の中でも階級が上だと思われる、威圧感のある男が言った。
今、恋仲を解消すると言うなら、敵国のこの女の命だけで許してやる、と。
迷う必要などない。彼女のいないこんな時代など、何一つ救えない。生きる意味などない。男はそう答えた。軍人はどうでもよさそうに、そうか、残念だ。と答えた。
男は暗い倉庫内に放置され、彼女のほうは別室に連れていかれた。男と彼女が暴れると散々殴られ、押さえ付けられた。
しばらくして、身体中痣だらけになり、衣服はボロボロになって半裸になった状態で彼女は返された。
彼女は魂の抜けたように無表情に横たわっていたかと思うと、啜り泣きながら奮え出した。
何度も愛を囁き合い、励まし合い、乗り越えてきた彼らだが、終幕は近づいていた。
男は奮える彼女の、綺麗なブロンドの髪を撫でることしかできなかった。
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