誰もいない

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起きたら、人間が消えていた。 僕は昨日、寝る前に願った。 「世界中に僕一人ならいいのに」 その願いが叶ったんだろう。町のいつもの風景から人間だけが切り取られたかのように、誰も、どこにもいなかった。 嬉しかった。自分を虐めるクラスメイトも、腹いせに暴力を繰り返す親ももういなくなった。自分を縛る悪の種は消えた。自由になれた。 清々しい気分で道路の真ん中に寝転がった。
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