条約明けと建造計画

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A-140計画は艦政本部の第四部で昭和十一年から設計が開始された。 当初は藤本喜久雄造船大佐が指揮をとり後に福田敬二造船大佐に引き継がれることになった。 設計段階で主砲配置や艦型をどうするかで紆余曲折があった。 しかし、ほぼ一年をかけて計画が完成している。 これまでにない程の巨砲の搭載の他、重要区画を防御するバイタルパートを採用しての集中防御方式や、大和の特徴の一つの筒型艦橋や球根船首(バルバス・バウ)など様々な新機軸がここで採用されている。 設計と並行するようにして海軍では巨大戦艦建造の巨額の予算獲得に試行錯誤する。 この四六センチ砲搭載の新型戦艦は最高の軍機(つまり最高機密事項)だったので額面どうりに予算を議会に提出するわけにはいかない。 そのため、基準排水量三万五〇〇〇トン、速力二六ノット、主砲四〇センチ×九門の戦艦を二隻建造する予算案を提出。 不足分は同時に予算計上した駆逐艦や海防艦などの建造を水増しして提出。 その結果、大和の建造は議会に対しても秘密裡に行われたのだ。 大和の建造には巨額の予算が必要であり、もしワシントン軍縮条約がなければこのような巨費のかかる戦艦を建造しようとは思わなかったであろう。 なにはともあれ、これでいよいよ巨大戦艦の建造は現場に引き継がれていく。
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