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「ひっ……っさ、触るな触るな触るなぁ! いったいどうしたってんだ、勇者は!」
──‥ズザザザザサッ!
天下の魔王様ことフォン=クライシスト=リリアは、豪奢な飾りのついた黒地の椅子を豪快に倒しながら後ろ向きに飛び退くと、城の壁にゴツン! と頭をぶつけながら全ての元凶である勇者……ルートを指差し、ギャアギャア騒ぎ出した。リリアの左手は自分の左頬へと添えられ、手で隠れていない他の箇所は何やら真っ赤に染まっている。
「相変わらず騒々しい方ですね……まぁ、お元気そうで何より」
ニコッ。
ルートはリリアの状態に満足気に笑みを浮かべ、その笑みを張り付けたままリリアへと歩みを寄せる。
リリアは後退しようとするも、もう後ろへは行けずに半泣きでルートを睨みつける。……それが、ルートを更に煽(あお)る行為ということも知らずに。
「……。頭は良いのに、何故こんなに鈍いんでしょうね…」
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