足音

2/3
前へ
/15ページ
次へ
足音。 そう。背後から突如としてテレポートしてきたかのようなスピードで現れたのである。 いや、灯子が気づかなかっただけなのかもしれない。 だが徐々にじわじわとそれは迫ってきた。 だんだんと大きくなる音と共に。 さすがに灯子も気付いた。 いささか奇妙な足音に。 それは、灯子の影のようにピッタリとくっつき、離れないのだ。 早足になる。 すると足音も早足に。 止まる。 同時に足音も止まる。 冷や汗が頬を伝う。 思ったのはただ一つ。 〈つけられている〉 再び早足になる。 徐々にスピードを上げながら。 次の角を右に曲がれば家だ。 ふっ切れたように勢いよく走りだす。 後ろなど見ている暇はない。 ただ、必死に、迷路で出口を求めているかのように…。 角を勢いにまかせ曲がる。 だが何かに左腕を掴まれた。 そのまま体重は後ろにかかり尻餅をつくように倒れこんだ。 「いやぁぁぁっ!!!離してっっっ!!」 掴まれた腕をふる。 ただ力ずくで振り払おうとする。 頭のなかでは分かっている。 きっと振り切れない。 だが意外にも早く腕を掴んだモノは解けた。 瞬時に立ち上がり駆ける。 家に駆け込む。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加