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足音。
そう。背後から突如としてテレポートしてきたかのようなスピードで現れたのである。
いや、灯子が気づかなかっただけなのかもしれない。
だが徐々にじわじわとそれは迫ってきた。
だんだんと大きくなる音と共に。
さすがに灯子も気付いた。
いささか奇妙な足音に。
それは、灯子の影のようにピッタリとくっつき、離れないのだ。
早足になる。
すると足音も早足に。
止まる。
同時に足音も止まる。
冷や汗が頬を伝う。
思ったのはただ一つ。
〈つけられている〉
再び早足になる。
徐々にスピードを上げながら。
次の角を右に曲がれば家だ。
ふっ切れたように勢いよく走りだす。
後ろなど見ている暇はない。
ただ、必死に、迷路で出口を求めているかのように…。
角を勢いにまかせ曲がる。
だが何かに左腕を掴まれた。
そのまま体重は後ろにかかり尻餅をつくように倒れこんだ。
「いやぁぁぁっ!!!離してっっっ!!」
掴まれた腕をふる。
ただ力ずくで振り払おうとする。
頭のなかでは分かっている。
きっと振り切れない。
だが意外にも早く腕を掴んだモノは解けた。
瞬時に立ち上がり駆ける。
家に駆け込む。
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