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正常≠異常
……こっ………
声が聞こえる。
……と……こっ……
徐々にはっきりと…。
……灯子っ…
『灯子っ!?大丈夫?』
鉛のように重いまぶたがゆっくりと返事をするように開いた。
母だ。
心配そうな顔をしてこちらを覗き込んでいる。
「おか…さん…ここどこ……?」
『家よ。灯子の部屋。』
ハッとする。
そうだ…私……
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
突然叫ぶ。
あの忌々しい記憶が蘇る。生々しい程に。
母がびっくりして後ずさる。
布団の中に灯子は潜る。
自然と体が震え――痙攣のように――手足の自由が利かなくなった。
吐き気までも催してくる。
涙が滝のように頬を流れた。
『……………!!!』
母が何か言っている。
だが何を言っているのか聞き取れない。
それほど灯子は混乱していたのだ。
涙を手で拭った時、違和感に気付いた。
「…眼鏡…!!」
とっさにまわりを見渡す。
だが無い。
血の気が一気に引く音がした。
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