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「ただいま」
玄関のドアを開けて、無意識に挨拶をする。
いつまでたっても、一人暮らしには慣れてないみたいだ。
茜と凪は、一回買った荷物をまとめるとか何とかで、茜の家に入って行った。
多分しばらくすればやって来るだろう。
「さて、暇だな」
食事の材料も向こうに任せているため、やることがない。
というかぼーっとするしかない。
ふと、部屋に置かれた花たちを見る。
そういえば水やりを凪に任せたから、花と会話をしていない。
「寂しかったか…?」
花に話しかけるなんて、やっぱりちょっと変なのかもしれない…が、何か落ち着くんだよな。
昔…小さい頃は、そんなことなかった。
でも、あの日…あの日から、オレの中で花の存在が大きくなった。
そう…あの日…
オレの7歳の誕生日…そして…母さんの…。
「あーきらっ、お待たせ!」
ドアの開く音と共に、茜の声が響く。
どうやら準備は終わったらしい。
「…お邪魔…します…」
茜に続き、凪も遠慮がちに入ってきた。
「あぁ、どうぞ。飯、用意するのか?」
「ん、ちょっとゆっくりしたら作ろうかな。ね、凪ちゃん!」
「……うん」
昨日より、笑顔の凪。
…だめだな、やっぱり可愛い。
こんな可愛い子と会っていたなら、忘れるわけがないのに…
何で、覚えてないんだろう…何で、わからないんだ…?
考えてもやっぱりわからない。
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