自由な子猫

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ズドンッ! 夜の静寂をかき消す轟音が屋敷を震撼させた。 「何事だ!?」 豪華な部屋の一室で醜いまでに太った男はベッドから飛び起きて叫ぶように言った。 だが、その部屋には誰もいなかった。 「浴室が爆発した!爆発の影響で邸内のあちこちで火事だ!急いで消火に取り掛かれ!!A~C班は一階を!残りは二階だ!現在警備中の奴等も消火にあたれと伝えろ!急げ!!」 『了解!!』 別の部屋では警備隊長が素早く消火の指示を行い、部下の警備兵達も指示に従って素早く動いた。 ダダダダッ! 足首を響かせて誰かが迫って来る音が地下の廊下に響いた。 「どうしたんだ!?」 扉の前に立っていた男は駆け寄ってきた同僚に問い掛けた。 「上で火事だ!お前も消火に回れ!!」 「分かった!」 ダダダダッ! 二つの足音はそこから遠ざかり、そこには上から聞こえる怒声と屋敷が燃える音だけが響いていた。 そのとき、天井から黒いフードを目深に被り全身黒一色に包まれた人影が落ちてきた。 人影は目の前の扉を蹴破って部屋の中へと入った。 そして、部屋の奥に飾られていた壺を抱えて布風呂敷に包み込んだ。 「任務完了っと」 人影はただそう言って影のように静かに屋敷から姿を消した。
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