若き雄猫

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スッ… 壁を通り抜けてアウラは仮眠室に現れた。 仮眠室は広く、静かで闇に包まれていた。 そして、ベッドの上に寝ているルーサーとベッドに凭れるように眠るリアの姿がアウラの目に入った。 二人は仲良さそうに互いの手を握ったまま眠っていた。 (アラ…面白そうな事になってるのね。この二人…私はお邪魔みたいだし…さっさと確認するとしますか) アウラはそう思い、その手をルーサーの額に乗せて意識を集中させた。 フッ… その瞬間、アウラの姿が煙のように消えたのだった。 正確に言えば消えたワケではない。 ルーサーの意識の中に入り込んだのだ。 精神体であるアウラは他者の意識の中に入り込む事も可能なのであった。 ルーサーの頭の中の光景は例えるならテレビの砂嵐のようで、途切れに何かの映像が矢継ぎ早に切り替わりながら映っていた。 深く眠っているようで、ルーサーの思念は感じられなかった。 一瞬なにかが見えて砂嵐、そして、光景が切り替わったと思えばまた砂嵐… それが何度も繰り返されていた。 (記憶の状態が酷く曖昧で不安定ね…。これは完璧に記憶障害を引き起こしているわ。結構重傷みたいね) フッ… アウラはルーサーの記憶の状態を確認すると即座にルーサーの意識から抜け出て、元の位置… ルーサーの枕元に立っていた。
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