自由な子猫

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「…陽動作戦を用いる事により、目標であるネグリメーネの壺を回収…いえ、奪還に成功しました。報告は以上です。これが現物です」 コトン… そのように報告する声はまだあどけさが微かに残る声変わりしていない少年の声だった。 だが、その少年の声には若者特有の頼りなさが全く感じられず、それだけで普通以上に険しい人生を歩んでいる事が知れた。 少年は全身を黒い衣装に身を包み、黒一色としかいいようのない格好をしていた。 遠目から見れば黒ミサか何かにしか見えない格好をしていた。 「確かに本物のようだな。ご苦労だった。これが今回の報酬だ。受け取れ」 カウンターの向こう側に座る立派な顎鬚を蓄えた大男は見た目から予想できるような厳格そうな低い声で言い、口を紐で縛った小さな布袋を放り投げた。 大男の横には甘いマスクをしたバーテン風の男が控えていた。 パシッ! 少年が布袋を掴むとジャラジャラとした金属音が聞こえた。 「これからのお前の働きに期待しているぞ。ブラッド」 そう言う大男の声には優しさを感じられる暖かみのある声だった。 「期待されてもこちら側としては結構困り物なんだけどね」 自嘲気味に笑いながら少年… ブラッドは言った。 「まあ、そう言うな。お前の働きは優秀そのものだからな。次の執行依頼があるまで体を休めておけよ」 「了解。俺はいつもの場所にいるから、そのときになったら呼んでくれよ」 そう言ってブラッドは身を翻し、ギルドを一旦後にした。
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