自由な子猫

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「どんな助けになるって言うんだ?」 懐疑的な視線でブラッドを見つめてルマンダは言った。 「そうだな…例えば希少生物の保護を依頼された場合とか、潜入系の依頼の場合…他にもいろいろあるが、対象を傷付けずに事を運べるというのと、実体がないから壁や天井をすり抜けられるのは大きな利点だ。彼女の能力は俺達にとってかなり有益だと思う」 ブラッドはルマンダの問い掛けに対してそうか回答した。 「確かにそうだが…コイツが嫌だと言ったらそれで終わりなんだぞ」 ルマンダは女を指差して言った。 「いいわよ」 「ほら!コイツだってこう言って…って…エッ!?」 ルマンダは途中まで勢いよく言っていたが途中で間抜けな驚愕したような声を上げた。 「いいわ。ここにいても何もないし、退屈してたから。外に連れ出してくれるって言うならいいわよ」 女はクールにそう言った。 「交渉成立だな。アンタの名前は?」 「アウラ…アウラ・シルヴァー・グロウリーよ」 女は… いや、アウラはそう言った。 「アウラか。宜しくな」 そう言ってブラッドはアウラに右手を差し延べた。 「ええ、宜しく」 アウラは微笑してその手を握り返した。 それが執行者アウラの誕生した瞬間だった。
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