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昼下がりの午後。
小高い丘にひとつのお墓が暖かい風と太陽の光に包まれながら、建っていた。
「見晴らしサイコーだねぇ亜美ちゃん」
花束を抱えながら、柚が空気を胸いっぱいに吸い込んだ。すぐに、花の香りにむせて咳き込む。
「なにやってるんですの。やっぱり人間は馬鹿ばっかりですわね」
呆れたような口調で言って鼻で笑うヒカリ。
「アンタにだけは笑われたくないっての」
舌をだしてあっかんべーをする柚に、ヒカリは大げさにため息をついてみせる。
「まぁまぁ、お墓参りしましょう」
喧嘩に発展しそうな勢いだったので、あわてて碧が仲裁に入った。
「おい、うるさいぞおまえら」
隼に叱責されて、水をかけられた炎のようにしょげる二人。
「ほら、あの日から丁度一年目の日なんだから喧嘩しないのー」
亜美は二人をなだめ、柚から花を受け取ると、お墓に供える。
「もうそんなに経つんですの?」
「黙っててよ、高飛車」
再びバトル勃発。
手に負えなくて、三人ともお手上げ状態。
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