ありがとう

3/8
前へ
/235ページ
次へ
昼下がりの午後。 小高い丘にひとつのお墓が暖かい風と太陽の光に包まれながら、建っていた。 「見晴らしサイコーだねぇ亜美ちゃん」 花束を抱えながら、柚が空気を胸いっぱいに吸い込んだ。すぐに、花の香りにむせて咳き込む。 「なにやってるんですの。やっぱり人間は馬鹿ばっかりですわね」 呆れたような口調で言って鼻で笑うヒカリ。 「アンタにだけは笑われたくないっての」 舌をだしてあっかんべーをする柚に、ヒカリは大げさにため息をついてみせる。 「まぁまぁ、お墓参りしましょう」 喧嘩に発展しそうな勢いだったので、あわてて碧が仲裁に入った。 「おい、うるさいぞおまえら」 隼に叱責されて、水をかけられた炎のようにしょげる二人。 「ほら、あの日から丁度一年目の日なんだから喧嘩しないのー」 亜美は二人をなだめ、柚から花を受け取ると、お墓に供える。 「もうそんなに経つんですの?」 「黙っててよ、高飛車」 再びバトル勃発。 手に負えなくて、三人ともお手上げ状態。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4008人が本棚に入れています
本棚に追加