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最近の博人には、驚かされることが多い。
今朝も珍しく朝早くから起きてきて、学校へ行くから朝飯などと言うのだ。
雅子はそんな博人に
「熱でもあるんじゃないの?」
と、額に手を当てる。
「ちげーよ。
することねーからって、また街で刺されたくねーだけだよ。
暇だから、行くんだよ」
本当のところは、友達の宛てが学校にしかないのだ。
人を避け続けた博人にとっては。
「んじゃまぁ、行ってくるわ」
玄関を開けて、博人は溜め息をつく。
「あー、ずっとお袋の声聞くのもしんどいな」
朝から驚いた雅子の心の声が、ひっきりなしに頭の中に響いた。
しかし、その間に優しい言葉が入り、自分は愛されてるんだと思った。
その言葉が響く度、博人は飯を吹き出しそうになり、かなわなかったが。
学校に向かい、足を進める。
学校に近付くにつれて、頭に響く声は自分に対しての物になっていく。
煙たがる声、珍しい物を見る声、皮肉など
明らかに、博人を拒絶する声。
校門をくぐり、教室へと向かう。
『2ーB』と書かれた表札の下の扉を、博人は勢いよく開けた。
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