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教室に入ってくる博人の姿を見て、クラスメート達は驚いた。
いくら鈍感な博人でも、心の声を聞かずとも感じ取れる空気。
構わず、博人は一番後ろの真ん中の列の自分の席に腰掛けた。
『何しに来たんだよ』
『近付かない方が、いいな。アイツ危ねーから』
『珍しい~。夏目君が学校来てるよ』
『この前、街で刺されたんでしょ?あの人』
あからさまに、否定され博人は笑ってしまった。
それを見た、隣の小さな男が話しかけてきた。
「夏目君、なんかいいことあったの?」
隣を見た博人の目に飛び込んできたのは、机一面に書かれた落書きだった。
中傷だらけの机は、明らかに自分で書いた物ではないだろう。
博人は、その中で
『犬山 太郎』という字を見付ける。
どうやら、コイツの名前らしい。
博人は、話し掛けられたのを思い出し
「なんでだ?」
と答えた。
これには、話し掛けた犬山自身が驚いた。
博人が話し掛けられて、答える所など見た事がない。
いつも悪態をついて教室から出ていく。
でも今日の博人は、それをしなかった。
犬山自身、駄目元で孤独を紛らわす為に話し掛けたのだ。
博人は、犬山の声が頭に響いていた。
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