『ポチ』

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「だって、夏目君笑ってたから」 犬山が続ける。 それに博人は 「明らかに浮いてんなぁ。俺。 って思ってよ」 と、答える。 周りが、シーンとする。 博人がムカついたと取ったらしい。 犬山までも、引きつった笑顔で 「僕と一緒だ」 と言った。 「らしいな」 博人が笑顔なのを見て、犬山も安心したのだろう。 「夏目君、怪我はもういいの?」 「あー。平気だよ。 先週、退院したんだよ」 「刺されるって痛かった?」 犬山の質問に、周りが再び凍りつく。 あまり博人を刺激するなと思っている。 博人には、それが可笑しくて 「イテーぞー。 血はドバドバ出るしよー」 と大笑いしながら話す。 「凄いなぁ。 僕なら耐えられないな。 そんなの」 「んなことねーよ。 イヌサンにだって耐えるからよ。 刺されて気失うだけだ。 それにしても、お前オモシレー名前だな。 『イヌサン タロウ』って、思い切り犬じゃねーかよ? だからイジメられるんだよ」 これには、いつもは黙ってしまうだろう犬山だが、博人が威圧的ではなかったので修正する。 「違うよ。イヌヤマ!『イヌヤマ タロウ』だよ」 「マジで!?だってよー。 富士山とか、これでサンだろうが同じ名前なのにヤマは反則だわ~」 「何言ってんの?小一の漢字だよ?」 「あー面倒くせー。とにかく、お前犬みたいな名前だし。 小せーから、『ポチ』だ」 博人のこの一言で、教室の一部で笑いが起きた。
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