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事情がよく飲み込めない。
タクミが先にお風呂を出て、あたしがあがった時にはもう居なかった。
カバンも、服も、靴も、あたしのを残しては何もない。
肝心の10万も、まだもらっていない。
タクミは…ヤリ逃げしたんだ。
そう思うと、いきなり体が震え出した。
こんなこと初めてだし、おしっこだって、中出しだってさせたのに、完全に逃げられた。
怖い。
その時、部屋の電話が鳴った。
タクミかもしれない…
あたしはすぐに電話を取った。
『はい』
『こちらフロントでございます。お連れ様がただいま出て行かれましたが、お客様はどうなさいますか?』
やられた。
もう終わった。
あたしが一方的にヤらせただけ。
タダマン女になってしまった。
『…お客様?お客様?』
フロントからの呼び掛けも上の空で、あたしは遠くを見つめ続けた。
バスタオル1枚でいる自分が、急に惨めでしょうがなく思えた。
『…帰ります』
『かしこまりました。では』
電話を切った後、あたしはベッドの上でさんざん泣いた後、よろめくようにホテルを後にした。
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