トンネルを抜けると

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社会科で習らったやつが今目の前にあるの?  「はじめて見た」と言ったら、ごゆっくりどうぞと去って行った。  はじめてみた琵琶湖。  夜中に人から教えてもらうなんて、思いもよらなかった。 ぽかぁんと見ていた。 ずいぶんでかい。月明かりの照り返しがきらきらしていた。 後で聞いたら 「われはうみのこ」  ってうたわれていて (琵琶湖周航のうた) うみと間違っちゃった人は昔にもいたのかな・・・? それとも昔は湖もうみと呼ぶのかな。まみずのうみだからかな。 (1) われは湖(ウミ)の子 さすらいの  旅にしあれば しみじみと  昇る狭霧(サギリ)や さざなみの  滋賀の都よ いざさらば (2) 松は緑に 砂白き  雄松(オマツ)が里の 乙女子は 赤い椿の 森陰に  はかない恋に 泣くとかや (3) 波のまにまに 漂えば 赤い泊火(トマリビ) 懐かしみ  行方定めぬ 波枕(ナミマクラ)  今日は今津か 長浜か (4) 瑠璃の花園 珊瑚の宮  古い伝えの 竹生島(チクブジマ 仏の御手(ミテ)に 抱かれて  眠れ乙女子 やすらけく (5) 矢の根は深く 埋もれて 夏草しげき 堀のあと古城にひとり 佇(タタズ)めば  比良(ヒラ)も伊吹も 夢のごと (6) 西国十番長命寺  汚(ケガ)れの現世(ウツシヨ) 遠く去りて  黄金の波に いざ漕がん  語れ我が友 熱き心  ・・・・・・・・・・・・・  昭和初期のどこかの高校のボート部の歌だ。 父がよく歌っていた。おおらかな歌だ。  よくわからないけど、夢や希望を共有できる時代が昔はあったんだろう。羨ましい話だ。 ・・・・・・・・・・・・・・  不安が消えて 予感がした。  ……なんか、もしかすると、いいことがあるかもしれない。 自分では想像も出来ないけどなんかありそう。 何かいいこと。黄金の波に 漕ぎ出ていこう・・・ 広い景色をみてそんな心地になった。
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