序章 引き出しから這い出てきたもの

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最初に手が見えた。 次に見えたのはひどく悪趣味な豹柄のハットだった。 どうかその時のあたしの恐怖を察してほしい。 この光景を、どこかで見たことがあるような気がした。――しばらく前に流行った映画だ。這い出てくる様はよく似ていた。 彼は完全に這い出してくると、服の乱れを整えた。それはよく見ると案外仕立ての良いダークグレイのスーツだった。しかしやはり悪趣味だった。 そして彼は「引き出しから這いずり出るくらい日常茶飯事ですよ」とでも言うように軽くハットを取って自己紹介した。 「こんにちは、ダクタルです。未来から来ました」
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