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ふと強い風が吹いた。前髪が少し目に入って痛い。流石に倉田の集中力も切れるんじゃないかと思った。
「倉田、窓しめようか?」
倉田は俺の予想を裏切り集中力を切らす事なくキャンバスに向かっていた。倉田のくせっ毛がふわふわ揺れる。
その姿はまるで一枚の絵のように俺には見えた。
綺麗だと、思った。
(あ、れ…何?)
心臓がドクドクとうるさい。
まさか、まさか俺は倉田に…
「嘘だッ!!」
「わぁっ!」
思わず大声を出してしまった俺に倉田が椅子から落ちた。
「あ、わ、悪ぃ…!大丈夫か?」
「う、うん、大丈夫だけど…どうしたの?」
倉田に真っ直ぐ見つめられて俺は固まった。倉田はそんなに可愛い方じゃない、というかどこにでもいそうな子で、俺の好みでもなんでもないし、何でこんな気持ちになったのか全然わからない。けど、心臓がうるさいのは事実で。
「中沢くん?」
「く、倉田…!」
バターン!!
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