桜の墓標

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1980(昭和55)年 3月 広島県 呉市 春の心地よい風が海辺の町に潮の香りを運んでいる。 今も昔も海事の町、呉。 今は平和そのものだった。 町外れの小さな神社に向かい、1人の老人とその孫が歩いていた。 老人の顔は穏やか。 町内の品のいい好好爺といった風情だったが、背筋だけはピンと伸びていた。 以前軍隊で教育を受けた者らしかった。 孫はやんちゃ盛りで、老人の前を歩き、早く、早くと老人を急かしていた。 やがて2人は神社の境内の階段を昇り始めた。
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