桜の樹の下で

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  そして二人からサンドイッチ状態の女の子が、本編主人公、鈴木 雅である。 成績は中の上、家庭環境は普通。友達が少ないので特にもてるわけでもない。似ている芸能人はと問われてネズミと答える、どうしようもない面を持ち合わせている。 平凡な、特に取りえもない彼女が持っているものといえば両親の遺志くらいだ。 だがその両親の遺志が、大きく彼女に変動をもたらすこと、そして未だ原石の彼女の心を磨き上げてゆくことになる。 *** ――クラス替えなど、無いようなものだ。 私立のエスカレーター式の学校だから、顔ぶれが大幅に変わるわけではない。あちらこちらで緊張ぎみの学生がいるくらいで。 あらかじめの説明会でクラスは分かっている。その中に誰がいるかも。 克もいるし、秀もいる。 中学と変わらない環境に、ほっとした。 まぁ、ただ、そのぶん注目は集まってしまうのだけれど。 「おっはよーございまっす!!」 お調子者の克が、ドアをスライドさせると同時に絶叫しながらヘッドスライディングで教室に入り込んだ。 そしてワックスかけたての床は案外滑り、教卓に激突して止まった。クスクスと笑いが起きる。 「色んな意味で滑ってるけど」 「バカだな」 その脇を、他人のふりして通り過ぎる二人。 唖然としていた生徒たちは、金髪のヤンキーかぶれと、私立にしては派手なチビの乱入に、驚きの色を見せた。 全員の机には一枚のプリントが置かれている。 『ようこそ、鬼ヶ丘大学附属高等学校へ!』 見なくても学校案内だとわかったし、読むのもめんどくさいので、とりあえず二人して(克はぶつけた頭を抱えている)丸めて捨てる。 秀はそのまま本を取り出し読み耽り始めたため、雅は何となく使い古された机に目をやった。  
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