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その母の瞳に映った諭吉さんを仙道さんも見抜いたのか、何やら紙を取り出した。
「このくらいを考えているのですが、いかがでしょうか?」
それを見た母は驚き、何度も指でなぞっている。
ようやく書かれているものを理解したのか父に見せはじめた。
それを見た父も母のように指で何度もなぞった。
「なぁ…母さん、可愛い子には旅をさせろっていうよな?」と母を見て言ったあと俺をじっと見た。
「そうね。お父さん、可愛い子には稼がせろって言うものね」
「…………」
いや、言わないと思うぞ……。
「瑞希、行ってらっしゃい」
二人揃って言った。
その二人の瞳にはやっぱり可愛い息子の俺のが映って………いなくて諭吉さんだけが映っていた。
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