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同室の先輩に買い出しを強制された沢村は小さく抗議をしながら寮の門を出た。
チカチカと最後の力を振り絞る街灯を一つ通り過ぎた時にふと空を見上げる。
真暗な空に赤い点が二つ、動く。
あんな鉄の塊がよく空を飛ぶものだと、柄にもなくそんなことを考えた。
「わっ」
そのまま上を見上げながらしばらく歩いていた所為で対面から近づく人間の姿に気づかずぶつかってしまう。
「す、すいませ…って、おま」
「どーも」
鼻を押さえたままその顔を見ると、それは部活で見知った顔だった。
無表情のその男…降谷は、沢村を見下ろすと素っ気なく挨拶をした。
「…なにしてんの」
「うるせーな、買い出しだよ」
何気なく聞いた降谷に沢村は恥ずかしくなって乱暴に答えた。
入学してすぐに、その剛速球から一軍に昇格した降谷はもしかしなくても部屋の先輩に買い出しを強制されることなど無いだろうと沢村は心の隅で思った。
「お前は何してんの」
しかし今降谷が沢村と同じように夜の道路を歩いている理由が沢村には分からず、微かに沢村と同じようにパシリに使われているのではないかという期待も込めて聞いた。
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