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予報通りの雨に、街は色とりどりの傘の花で彩られる。
人の波は止まることなく、車は目を光らせて走る。
動き続ける街の中で、1人の少女が傘も持たずに立ち尽くす。その顔は悲しげに俯いている。
少女に誰1人、声を掛けることはない。
その目に映るのは、水溜まりにできる、いくつもの同心円。作られては消えるその輪を、少女はただただ見ているだけだった。
水溜まりから輪が消える。
遮られた雨に気付き、少女はゆっくりと横に目を向ける。
黒い傘を差したその人物は、やわらかく微笑した。
THE END
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