859人が本棚に入れています
本棚に追加
「誰かぁ!!ひったくりよ!」
暗くなった街で女性が叫ぶ。
女性の横を走り抜けていくバイク。ドライバーはフルフェイスのヘルメットを被った男。左手には女性のバッグが握られている。
(ちょろいもんだぜ!)
男はさらにスピードを出す。女性との距離がどんどん開いていく。
小さくなっていくバイクを見つめ、女性は混乱しながらも警察に連絡する。
「よかったら、あなたのバッグ取り返しましょうか?」
「え…!?」
声のする方へ振り向いた時には、声の正体はいなくなっていた。
人気がなくなった場所まで走ってきたひったくり犯。
(ここまで来れば……。)
すると、前方にライトで照らされた人影が突如現れる。
「“大地開花(トラック・ロータス)”。」
その人影を中心に道路が放射状に割れる。
「うわぁ!?」
バランスを崩し、倒れるひったくり犯。
「人の物を盗っちゃダメでしょ。」
ひったくり犯に近づくレン。
「…ッ!!」
ひったくり犯は後退りした。
「“天空往来(セレスチャル・ドライブ)”。」
バイクが空の彼方へ蹴り飛ばされた。
「ひいッ!!」
「さあ、そのバッグ返し……。気絶しちゃってるよ。」
――2分後。
女性の元にバッグが戻る。
(いつの間に……。一体誰?)
バッグの中には、『初めてだから無料にしとくよ。何でも屋。』と書かれた紙が入っていた。
レンの鼻に水が落ちる。
「うわ。雨降ってきちゃったよ。」
雨に濡れながら、レンは家路につく。
以前から行っていた何でも屋を続けているレン。あれから1年が経って、傘遣いとも会っていないが、心配はしていない。
レンも傘遣いと似たように、自由気ままに仕事を続けた。
最初のコメントを投稿しよう!