最終話

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  「誰かぁ!!ひったくりよ!」 暗くなった街で女性が叫ぶ。   女性の横を走り抜けていくバイク。ドライバーはフルフェイスのヘルメットを被った男。左手には女性のバッグが握られている。   (ちょろいもんだぜ!) 男はさらにスピードを出す。女性との距離がどんどん開いていく。   小さくなっていくバイクを見つめ、女性は混乱しながらも警察に連絡する。   「よかったら、あなたのバッグ取り返しましょうか?」   「え…!?」 声のする方へ振り向いた時には、声の正体はいなくなっていた。           人気がなくなった場所まで走ってきたひったくり犯。 (ここまで来れば……。)   すると、前方にライトで照らされた人影が突如現れる。   「“大地開花(トラック・ロータス)”。」 その人影を中心に道路が放射状に割れる。   「うわぁ!?」 バランスを崩し、倒れるひったくり犯。   「人の物を盗っちゃダメでしょ。」 ひったくり犯に近づくレン。   「…ッ!!」 ひったくり犯は後退りした。   「“天空往来(セレスチャル・ドライブ)”。」 バイクが空の彼方へ蹴り飛ばされた。   「ひいッ!!」   「さあ、そのバッグ返し……。気絶しちゃってるよ。」           ――2分後。 女性の元にバッグが戻る。 (いつの間に……。一体誰?)   バッグの中には、『初めてだから無料にしとくよ。何でも屋。』と書かれた紙が入っていた。           レンの鼻に水が落ちる。 「うわ。雨降ってきちゃったよ。」   雨に濡れながら、レンは家路につく。   以前から行っていた何でも屋を続けているレン。あれから1年が経って、傘遣いとも会っていないが、心配はしていない。 レンも傘遣いと似たように、自由気ままに仕事を続けた。    
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