4人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
しかし、声をかけるより早く何かがおかしいと気付く。
そう、人の気配に敏感なナギが、ベランダの二人の気配を、感じない。
声も聞こえてはこなくて。
「…………え」
カーテンを開けた。
その視界に。
ただの闇がひらけている。
本当に二人がいない、がやつくテレビがやけに虚しく背後で響く。
口を薄く開き、呆然となりかけながらもベランダへ一歩、踏み出す。
全身が警戒を促していた。
だがその足元に上から落ちてきた二つの物体に、ナギの体はまた硬直する。
白のボールが歪んで酷い汚れ方をしてるように見えたが、それは違う。
組織の半分を無くした、頭蓋骨むきだしの人間の頭、だ。
「…リュウジ」
顔を半分なくした友人が、それでも恐怖より、何かポカンとした表情でナギを見上げている。
その横にある頭はそっぽを向いていて、穴のあいた後頭部しかみれない。
カロロロロロ…。
弾かれるよう見上げた。
闇に流れるよう消えた赤い光。
無機質な瞳に見えた。
最初のコメントを投稿しよう!