新しい街と倦怠感

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見知らぬ、これから慣れるべき天井をぼんやり眺めたナギ。 ミナトは彼の隣で静かに、この無気力な彼がまた笑うようにと思う。 前の土地では、彼は家族の中でひっそりと最後の砦でいた。 彼自身の家族はいない、ミナトの母親は彼の事を婿養子に向かえいれて、彼の母親になる、と宣言したものだ。 部屋には、着いた最初に荷物から出したナギの実母の遺影が笑ってる。 身寄りもなく、荒れ果てた生活と生き方をしていた彼がミナトの家族と暮らしだしてからは僅か一年で変わったものだ。 「明日から仕事なんだよね、ナギ大丈夫?この部屋に一人で留守番だけど」 やや返事に困る。 「うん、別に大丈夫、薬もあるし…」 彼は安定剤と睡眠薬をバックから取り出して苦笑、これがないと眠る事も上手くいきやしない。 「夜中には帰ってくるから、辛かったら眠ってていいからね」 ミナトの言葉に頷いて、もう一度だけ天井を見た。
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