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明日は近くの様子を観察しようと彼は思った、身を起こしてミナトの頭を軽く撫でると、そっとベランダから外を見る。
真っ暗だ。
いや、細々と通りには灯りもあるし隣の家や向かいのアパートも人のいる気配を醸し出している。
だが、何か。
何かがナギに、危険を促していた。
「……………山?か?」
じっ、と外を窺っていた彼の呟きにミナトは反応し、その背中から同じく外を見つめる。
「あ、山ね」
その山は、自分達のマンションから一つ向こうの通りから横たわるように広がっていた。
山は暗く、木々の動きが気持ち悪い、月の下でまるで山が睨みをきかせているようでナギはカーテンを閉ざした。
「あの山、なんか気持ち悪いな…近寄るなよ?」
当たり前、と彼女が言うから少し安心する。
ナギの感じる、倦怠感、それは思わぬ形で吹き飛んでしまうのに。
今はまだ、彼は自分の過去や今の状況にため息ついて参っている。
彼女だけは守れるように、それだけは確かに願っていた。
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